100%以上の復興を目指す熊本生産者レポート

2016.08.12

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20168月

与謝野鉄幹・晶子夫妻をはじめ、数々の文化人に愛されてきた阿蘇市屈指の温泉街・内牧。4月の熊本地震で温泉の一部が止まり、観光客減少などの影響を受けました。この地で九州最大規模の米作を営み、ICT(情報通信技術)を取り入れた経営で農業に変革をもたらしてきた『内田農場』。田んぼに被害を受けながらも「必要とされる人に、必要とされる米を届けたい」との思いを胸に、奮闘しています。

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約27万年前から続いた巨大噴火によって、350km2におよぶ世界最大規模のカルデラ(陥没)が誕生した阿蘇。標高500mの阿蘇・内牧一帯には山から美しい伏流水が注ぎ込み、年間を通した気温は15℃程度とさほど暑くなりません。こうした気候から病気や害虫の被害が非常に少なく農薬を最小限まで抑えられ、全国でも有数のおいしいお米に適した土地といわれています。内田農場ではこのダイナミックな地形を活かした米作りを行っています。

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「こだわった作り方をしているわけではないんです。阿蘇の大地がもつ力をいただき、寄り添いながら米を作っているだけ」と、内田智也さん。2014年に父から経営を受け継ぎました。高齢化や離農により委託された田んぼも引き受けることで、地域農業の受け皿となり、所有する田んぼは約350枚。東京ドーム8.5個分の広さにあたり、九州随一の作付面積を誇ります。農場をここまで大きく成長させることができたのは、先代とともに人知れず重ねてきた内田さんの努力に他なりません。

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内田農場で行う栽培は、苗からではなく、乾いた状態の田んぼに直接種をまいて水田栽培に切り替える「乾田直播(かんでんちょくは)」という方法。一粒の種が大地に根をはり、生命力あふれた米作りが特徴です。

さらに、“ごはんソムリエ”の資格をもつ内田さんでこそのこだわりも。

「食べるときの環境や、どんな人が食べるかといったニーズに応えるため、ワインやコーヒーのように異なる品種をブレンドする場合もあります。食べ応えや見た目、食感などで相乗効果を発揮します」

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新しい農業のあり方に挑む内田さんは「Apple Watch」などの最新テクノロジーを取り入れ、田んぼに取り付けたセンサーで、水温や天候などの変化をいち早くキャッチ。広大な田んぼで育つ米を、効率良く管理できる仕組み作りを整備しています。ただし、最後は人間の目と肌で感じることが重要、とも。

「稲の色によって肥料が足りないとか、病気や虫の被害に遭っていないかといった見極めは、センサーだけでは分かりづらい。人工知能をサポート的に使いながら、本質的な部分は後世を育成しながら伝えていくつもりです」

米作りを心から楽しむ内田さんが手渡してくれたのは、米の品種の本。「これを読んでいると、ワクワクするんです」。そう語るその表情は、図鑑を手にした少年のように、瞳がキラキラと輝いていました。

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「日本人にとって、お米は主食であり、嗜好品。米離れが進んでいると言われますが、需要と供給がマッチしていないことが、お米業界の問題だと思います。全ての方が、同じ味や質の米を欲しがっているわけではないですから」

こうして、ニーズにマッチした米作りを追究した結果、12品種もの米を作っている内田農場。

さらに「料理に適したお米で食べることが、一層美味しく味わう秘訣」だと語ります。「おにぎり、カレー、牛丼、チャーハンなどに合う米はそれぞれ違いますし、日本酒に合う米も異なります。たとえば牛丼に合う米であれば、汁がかかったときに一番美味しくなる硬さとか」。現在、内田農場ではおにぎりであればコンビニ、カレーや牛丼などは飲食チェーン、また酒蔵などと直接取引。

「シビアなリクエストに応える米を作っています。試験的に作る米は失敗も多いですが、新しいモノ好きな私にとっては面白くて(笑)。今後は用途に合わせて、美味しいお米を食べ分けられるような商品を、一般のお客さまにも提供できればと思っています」

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田んぼへ案内してもらうと、立派に成長した稲穂がこうべを垂れていました。一見すると、熊本地震による家屋の倒壊などの甚大な被害は免れたようにも見える内牧一帯。しかし、田んぼの一部は70cmほど落ち込み用水路が機能しなくなり、小さな池と化しています。地震がもたらした地盤沈下や液状化は、内田農場にも被害を及ぼし、1度目の地震後に被害を調べてもらったところ、田んぼの5割以上が「作付け不可」という判定に。

地震が起こった4月といえば、田植えの大切な時期。用水路が途絶えた田んぼにパイプを繋いで水を流し、機械が使えない場所は、手作業で田植えを終えたところで6月に集中豪雨が発生。無情にも田んぼに土砂が流れ込み、すべてを台なしにしてしまいました。

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「田んぼの亀裂を耕作機でならして、種を植えてみたものの、微妙な高低差ができたところは干上がってしまい…。畑へ転換する方法もありますが、土地が完全に乾かないと種付けもできませんし、メインはあくまで米ですから、使える田んぼがあれば水を流します。そうすると、使えない田んぼにも水を張るため、畑として使えない。難しいところです」

住む家が傾き、家族とともに実家への引っ越しを余儀なくされた内田さんですが、地震直後は取引先の地元旅館やホテルが営業できなくなったこともあり、卸す予定だった米を避難所に届けて回りました。

「私も菓子パンやインスタント麺で空腹をしのぎましたが、毎日は食べられない。お米があれば、なんとかなると思って。このサイトを運営されている、鶴屋百貨店をはじめとするお取引先にも米を十分ご用意できず、心苦しい思いでした」

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復旧にかかる、膨大な資金と時間。
地震がいつ完全に収束するか、先の見えない状況に不安を感じる一方、「できる人はできるところから、自分たちでやるべきだと思います」と先を見据える内田さん。今後について尋ねると「熊本地震の経験をもとに、水や電気を使わず食べられる米の開発も考えたい」と、どんな状況に置かれても挑戦の火を絶やしません。

「仕事が大変で儲からない、との理由から農家の親は後を継がせようとしませんが、私は農業を楽しむ姿を子供たちに見せて、職業の選択肢のひとつにしてもらいたい。美味しい米を作ることは大前提で、米作りを楽しみながら次の世代へ繋ぎたいと思っています」

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取材・文/三角由美子 写真/山口亜希子

※本記事の情報は2016年8月取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。

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農業生産法人
有限会社内田農場

所在地: 〒869-2301 熊本県阿蘇市内牧20
電話: 0967-32-2262

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