
長男夫妻がアイスクリームの開発・製造、次男夫妻が農業、そして三男夫妻はスイーツの製造・販売と、3兄弟家族で力を合わせて6次産業化を実現。新しい里山再生モデルとして全国から注目を集める市原さん一家。その販売拠点となる山鹿市の『ricca(リッカ)』は、2018(平成30)年のオープン以来、県内外から年間約3万人が訪れるフランス菓子専門店として人気を集めています。
今回、鶴屋では『ricca』とコラボして2024年のお中元にふさわしい限定ギフトをご用意。そこで、現地を訪ねてインタビューを行いました。父の思いを受け継ぎ、力を合わせて新しい里山農業の可能性を広げようとしている兄弟の思いとは?
ジェラート職人、農業、パティシエとして活躍する3兄弟が得意分野をいかしたスイーツを提供している山鹿市の人気店『ricca』。そのはじまりは、3兄弟の父である市原幸夫さんが中山間部の活性化を目指して始めたご当地アイス製造でした。
かつて幸夫さんが観光物産館などのプランナーとして活躍していた頃、直売所では加工品を出荷する農家が少ないうえ、高齢化も進んでいる現実を目の当たりにしました。そこで山間地域の農業の活性化につなげたいと平成9年に『(株)パストラル』を創業し、規格外品の農産物を活用した6次産業化への挑戦を始めることに。ご当地アイスという少ロット多品種の製造は効率化するのが難しく、しばらくは苦難続きでしたが、やがて経営は軌道に乗り、高級産地アイスとしての販売拡大に成功。こうして幸夫さんが築いた事業を発展させてきたのか、3人の息子と奥さんたちです。
以前は東京でサラリーマンとして働いていた3兄弟が故郷へ戻り、家族一丸となって里山再生に取り組むことに。その理由を尋ねると「3人で決意したというより、徐々に家族が故郷へ戻って現在に至った形です」と語る長男の邦彦さん。邦彦さんは東京の金融機関に勤めていましたが、結婚を機に奥さんと帰郷。父のアイス事業に加わり、オーダーメイドアイスの製造販売事業に特化する形でビジネススキームを再構築しました。その結果、現在は取引先が約30社、年間300種類のアイスを製造する会社へと成長。
その後、東京で農産物の流通業に関わっていた次男・伸生さんも父の夢に賛同し、農業を志すべく管理栄養士だった奥さんとUターン。すると父・幸夫さんは農業従事者の高齢化による後継者不足や耕作放棄地などの問題に立ち向かうべく、耕作放棄された栗林を借りて農業法組合法人を設立。さらに中山間地に適した農法として合鴨水稲同時作に注目し、アイガモ研究会の農家と連携。次男夫妻は里山ブランド「無農薬アイガモ米」の直販をはじめ、山鹿特産でスイーツの原料となる栗の栽培をスタートしました。
さらに東京にあるトップクラスのレストランでパティスリーを務めていた三男・勇生さんも夫婦で帰郷。そこで父・幸夫さんは「6次産業化総合化事業計画」の認定を受けて約1億7千万円を借り入れ、生産・加工・販売の拠点となるフランス菓子専門店『ricca』を開業。すると、山鹿食材の魅力と勇生さんの確かな技術、ブランドのセンスが相乗効果を生み、たちまち県内外からファンが訪れる人気店へと成長。こうして、それぞれの得意分野を生かした6次産業化とともに里山再生への挑戦がスタートしたのです。
2018(平成30)年のオープン以来、熊本県内外から多くのファンが訪れる『ricca』。 アンティーク調の店内にはカフェスペースもあり、庭を眺めながらスイーツを堪能できます。
今回、鶴屋でお中元ギフトとしてご用意いただいたのは「ジェラート詰合せ」、「モンブラン・グラッセ」、「3種のサブレBOX」の3つ。それぞれのラインアップについて教えていただきました。
まず「ジェラート詰合せ」は、阿蘇のジャージー牛乳をベースに山鹿産の農産物を盛り込んだ6種類のカップアイス。菊鹿町で農業を営む次男・伸生さんをはじめとする地元農家が栽培した熟成和栗を使った「山鹿和栗」、岳間地区で栽培された抹茶を用いた「岳間抹茶」、そして完熟させた山鹿市菊鹿町のあんぽ柿を刻んでクリームチーズのアイスに混ぜ込んだ「洒落柿クリームチーズ」。これら定番人気の3種に加え、オーガニックチョコレートを使ったジェラートに山鹿市鹿央町特産の金柑・ゆめこまちのコンポートを合わせた「金柑ショコラ」、山鹿産・夕べにの豊かな風味が引き立つシャーベット「山鹿イチゴ」、そして日本紅茶の発祥の地とされる山鹿の紅茶を使ったジェラートにラムレーズンを合わせた「山鹿紅茶ラムレーズン」。個性豊かな味わいを楽しめる鶴屋限定のギフトセットが完成しました。
素材をダイレクトに味わるものから食材を絶妙に組み合わせたものまで個性豊かなジェラート。 なめらかな口どけの後から濃厚な味わいが広がります。
続いて「モンブラン・グラッセ」は、お店の顔ともいえる看板商品。その開発には三男・勇生さんの特別な思いがありました。
「もともと東京に出たときから、いずれは山鹿へ帰ってお菓子屋さんをすると決めていて。どんな店にするか考えたとき、頭に浮かんだのが山鹿の栗でした。上京して知ったのは、山鹿の栗が日本で2番目の生産量を誇るうえ、質に関してはトップレベルでおいしいこと。ところが、地元の山鹿はもちろん熊本でもほとんど消費されることなく県外に出てしまい、栗ブランドを打ち出す他県でお菓子の原料として使われている。つまり、質は良いのに熊本産としては認知されていなかったのです。できれば、山鹿の栗を地元で消費されるようにしたい。そこで、洋菓子店の看板商品としてモンブランを打ち出していこうと決めました」(三男・勇生さん)
山鹿市菊鹿町で採れた新鮮な山鹿和栗は、庫内温度0℃で約4週間熟成させることで糖度が増し、より風味豊かに。これをペーストにして九州産の生クリームとメレンゲの上にたっぷりとコーティング。冷凍配送のため、冷たいままアイスケーキ感覚で食べたり、半解凍でセミブレッドにしてみたりと、好みの食べ方をお楽しみいただけます。
同じく多くのファンに支持されているのが「3種のサブレBOX」です。発売前にさまざまな厚みや大きさを試作してたどり着いたのが、現在の食べやすい一口サイズ。中に水分を閉じ込めつつ、外は高温でサクッと焼き上げる。この絶妙な焼き方が、ほかにはない食感を生み出しています。もちろん、材料にもこだわりが。香り高い発酵バターや石臼挽きした小麦粉、またフランス産の赤砂糖や粉糖を使い分けるなど、同じサブレでもフレーバーによって砂糖や卵の配合を変えています。
「ショコラには卵が入っていなくてココナッツは卵黄だけ。チャイには全卵が入っているなど。理想の味、食感が頭の中にあって、配合を変えることで食感がまったく違ってきます」と勇生さん。こうした見えないこだわりが、ファンの心を掴んでいるのでしょう。
東京ではトップクラスのレストランでパティシエを務めた三男の勇生さん。 その経験を生かしてレシピを考え、地元食材を生かしたスイーツ作りに取り組んでいます。
山鹿という里山の再生を願って起業し、6次産業化の礎を築いた父・幸夫さん。頼もしい3人の息子たちに夢のバトンを繋いだ現在は講演会に登壇したり、田畑を見守ったりしています。最後に、長男の邦彦さんへこれからの夢を尋ねると。
「弟の伸生が耕作放棄地で栗とともにワイン用のブドウを栽培していて、自分たちのオリジナルワインを作りたいと考えています。いずれはカフェも増築したいですし、さらに敷地を広げてレストランやベーカリーをはじめとする衣食住すべてが完結する場所にしていきたいです」と、我が子たちが大人になった時代を見据えた展望を教えてくれました。父から子へ、子からまた次の世代へ。家族ぐるみで取り組む6次産業化と里山再生が、どう広がっていくか。これからの展開が楽しみです。
建物の隣には芝生のガーデンテラス、正面には雑木林があり、住宅街の一角にありながら森の中に入り込んだ気分を味わえます。 ここを拠点に山鹿の魅力ある食を発信。
「ジェラート詰合せ」は、定番人気の山鹿和栗や岳間抹茶。洒落柿クリームチーズに加え、カットした果肉の食感が楽しい金柑ショコラなどの新たなフレーバーを加えた鶴屋限定ギフト。そのほか、低温で長期熟成させた山鹿産の栗と九州産の生クリームから作る看板スイーツ「モンブラン・グラッセ」、原料や配合を変えることで異なる風味や食感を楽しめる「3種のサブレBOX」も。里山農業を守ろうとする情熱から生まれた味わいは、特別なかたへの贈り物にぴったりです。
■ 4,644円(税込)
■ 250セット限定
■ 100ml× 6種。山鹿和栗、岳間抹茶、洒落柿クリームチーズ、金柑ショコラ、山鹿イチゴ、山鹿紅茶ラムレーズン(冷凍)。
■ 荷造総重量1.0kg
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