Vol.2 フラベド

「果物そのもの以上」を目指すコンフィチュールという魔法

安心できる素材を使うこと。 「手間はかかるけれど、自分たちの目が行き届く範囲でのものづくりを大切にしたい」とその土地にあったお店をオープンし、素材を吟味して自分たちがつくったもの、自分たちが選んだつくり手のものを発信する『カフーツ』。東京・二子玉川の路地裏にある人気店『カフェ・リゼッタ』をはじめ、鎌倉、大阪淀屋橋などで運営しているカフェやファブリックショップはいずれも地元の人気店となっています。

消費者目線に立って商品開発やプロデュースを手掛けてきた同社のシェフが「縁あって繋がった熊本の果物を使ったコンフィチュールの専門店を作りたい」との思いから誕生したのが『フラベド』です。今回、鶴屋では2024年のお中元ギフトとして鶴屋限定の特別セットをご用意。商品に込められたつくり手の思いを取材しました。

ある農家との出会いが転機。熊本の果物の魅力を都会に届けたい

工房の扉を開くと、甘酸っぱい柑橘の香りが部屋を包んでいました。厨房では、今まさにコンフィチュールづくりの真っ最中。出迎えてくださったのは、2016年秋のオープンと同時に入社して以来、コンフィチュールづくりに携わってきた店主です。そもそも『フラベド』が熊本に誕生するキッカケとなったキーマンのシェフは熊本出身ではないそうですが、なぜ熊本でお店を開くことに?

「契機となったのは『にしだ果樹園』の柑橘から作ったジャムでした。月の満ち欠けを利用した“月読み栽培農法”によって新月に収穫された柑橘は、凝縮した果実味とほど良い酸味があり、柑橘の概念が変わるほどの味わいだったといいます。こちらの農園の柑橘以外にも、シェフが熊本を拠点に活躍する料理研究家とコラボしてイベント出店した際、熊本で出会った農家さんたちとの交流を通じて、熊本の果物のおいしさにすっかり魅了されました。都会の人たちにもこの味を知ってもらいたいと考えたものの、熊本の新鮮な果物そのものを東京で届けようとすると配送の時間がかかって味や香りが落ちてしまいます。そこで、熊本でコンフィチュールにして東京や大阪などの都市部で味わってもらおうと考えたようです」と、当時のシェフの思いを代弁する店主。『フラベド』が誕生するキーマンとなったシェフはお店が軌道に乗ったタイミングで独立して東京へと帰り、現在は店主と数名の女性スタッフが思いを引き継いでいます。

「ジャムの本」などを出版している田中博子さんに1年間レクチャーして頂き、コンフィチュールのつくり方をマスター。 田中さんはフランスの人気コンフィチュール店『メゾンフェルベール』に勤務後、故郷の佐世保で菓子研究家として活躍されています。

ユニークな栽培方法に取り組む農家から仕入れ

コンフィチュールの主役である果物は、熊本を中心に20軒ほどの農家と直接契約。素材によっては熊本であまり作られていない農作物もあるため、福岡県うきは市のリンゴや沖縄県のパイナップル、愛媛県・宇和島の柑橘なども使われています。

向学心にあふれたユニークで先進的な栽培方法に取り組む農家のもとへと足を運び、どのように栽培されているかを掘り下げたうえで、品種や熟度を協議。果実そのもののおいしさを味わってもらいたいとギリギリまで完熟させ、味や香りが1番おいしくなった瞬間をコンフィチュールにしています。材料は基本的に果物と砂糖だけ。砂糖の量は少なめにして熱伝導の良い銅鍋を使って素早く水分を飛ばすことで、糖度が高く果実が凝縮された味わいに仕上がります。旬の果物で作るため季節ごとにラインアップが変わりますが、今回はお中元カタログのための特別ギフトとして、暑い季節にぴったりの味わいを用意していただきました。

旬の果物で作るコンフィチュールは季節ごとにラインアップが変わり、熊本の果物を一番おいしい状態で瓶に詰めて届けています。 春はイチゴや晩柑、初夏はプラムや桃、秋は栗やいちじく、冬は柑橘やりんごなど四季折々の味を楽しめます。

定番の食べ方から料理へのアレンジまで。コンフィチュールの新しい楽しみ方

まず『フラベド』で定番となっているのが、 菊池市泗水町『荒木いちご農園』で栽培した品種「よつぼし」を使ったいちごのコンフィチュールです。「果実をカットすると中心部まで濃い赤。香りも味も濃厚なのが特長です。市販のものと食べ比べれば、違いが際立っていると思います」とのこと。さっそく試してみました。

蓋を開けると芳醇な香りと同時にキラキラと艶めく果肉が顔を出します。丸ごと入った果肉をスプーンですくって口に含むと、イチゴの果汁が凝縮した味わいが口いっぱいに広がります。うーん、ぜいたく!

続いて「だいだい」は、フローラルな香りと気品高い味わいの後にやってくるビターな余韻がクセになる大人のコンフィチュール。バターを塗ったトーストやチーズなどの乳製品と合わせると、ほろ苦さがいいアクセントに。そして「河内晩柑」を使ったコンフィチュールは、濃い味わいながらも後味すっきり。炭酸水やスパークリングワインで割れば、ほてった身体をクールダウンしてくれそうです。

一方、同じ柑橘系でも「スイートスプリング」と「金柑」は、しっかりとした甘みが特長です。「スイートスプリング」は柑橘特有の苦みがほとんどなく、ソースやドレッシングに加えると味わいのアクセントに。「金柑」は濃厚な味わいが楽しめ、ヨーグルトやパンといった定番の食べ方以外にホットドリンクもオススメだそう。「肌寒いときに風邪予防としてお湯や紅茶で割って飲んでいます。皮のまま丸ごと入っているので食べごたえもあります」と店主。

柑橘の外皮を剥き、ワタや薄皮から果肉だけを手際良く取り除いていきます。「フレッシュな香りに包まれながら作業できて幸せです」とスタッフ。

不知火町『のむちゃん農園』のシャインマスカットを使ったコンフィチュールは、とぅるんとしたゼリーのような食感が楽しい味わいです。ヨーグルトはもちろんチーズケーキにフルーツソースとしてかければ見栄えが良く、お客様へのおもてなしにぴったり。そして『にしだ果樹園』のみかんを使ったジュースは、とろりとした濃厚な味わいがクセになりそう。ホットドリンクにすれば、またひと味違ったおいしさを堪能できます。

「今回ご用意したセットは素材の味わいをストレートに味わえるものばかり。そのぶん、幅広い食べ方をお楽しみいただけると思います。定番のヨーグルトやパンはもちろん、ソースやドレッシングのアクセントとしてお使いいただいたり、オードブルとしてチーズに添えていただいたりしても。完熟フルーツの個性が詰まったコンフィチュールをお楽しみください」(店主)

果物の香りが消えないよう、糖度を一度に上げるのではなく何回かに分けて砂糖を入れるのがコツだそう。 熱伝導率が高い銅鍋を使い、強火で一気に火を入れて作っていくことで、もぎたて果実のような風味や香りを封じ込めています。

コンフィチュールが熊本と都会をつなぐ架け橋に

『フラベド』のコンフィチュールを贈られた方が「おいしかったから」とファンになり、大阪や東京の姉妹店まで足を運ぶことも少なくないそうで、こうした広がりを通じて熊本のおいしい果物を知っていただけることが喜びと語る店主。「長年熊本に住んでいて果物が豊富でおいしいことは知っていたつもりでしたが、全国のお客様からの反響で、それがぜいたくなことだと気づかされました。このコンフィチュールをきっかけに熊本へ足を運んでもらい、道の駅などで果物を味わっていただけたらうれしいです」と店主は微笑みます。

「こんな果物もあるけど、コンフィチュールにどう?」と、生産者がとれたての果物をお店に届けてくださることもあるそうで、作り手の熱意と熊本の旬が詰まったコンフィチュールは、食べた人に熊本の魅力を届ける架け橋となっています。

素材によるものの、基本は水を加えずフルーツが持つ水分だけで煮詰めることでフルーツの味わいがぎゅっと凝縮。

Information

熊本県産果実のコンフィチュール〜いちごと柑橘セット〜

■ 3,910円(税込)
■ 50セット限定
■ 河内晩柑・いちご・だいだい130g×各1。(原料原産地/河内晩柑・いちご・だいだい:熊本県産)
■ 荷造総重量0.9kg

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熊本県産果実のコンフィチュール〜マスカットと柑橘セット〜

■ 4,180円(税込)
■ 100セット限定
■ 金柑・シャインマスカット・スイートスプリング130g×各1。 (原料原産地/金柑・シャインマスカット・スイートスプリング:熊本県産)
■ 荷造総重量0.9kg

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熊本県産果実のジュースとコンフィチュール

熊本を中心とするユニークな栽培方法の農家と直接契約。四季折々の果実をギリギリまで完熟させ、味や香りが一番美味しくなった状態でコンフィチュールにしています。菊池市泗水町『荒木いちご農園』で栽培したブランド品種「よつぼし」を使った1番人気のイチゴをはじめとする旬のコンフィチュールのほか『にしだ果樹園』の柑橘を使った濃厚なジュースなど、この時期にしか味わえない鶴屋限定セットです。

■ 6,600円(税込)
■ 50セット限定
■ いちご・だいだい・河内晩柑130g×各1、望月みかんジュース(ストレート)1,000ml×1。(原料原産地/いちご・だいだい・河内晩柑:熊本県産)
■ 荷造総重量1.9kg

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