Vol.2
丸亀醤油
母から娘へ受け継ぐ味。老舗が届ける、現代の一椀
明治から続くみそ屋が、「お湯を注ぐだけ」に込めた思い
熊本県山鹿市で明治3年の創業以来、醤油とみそを造り続けている『丸亀醤油』。蔵造りの店舗の隣では、今も昔ながらの製法で醤油とみそを仕込んでいます。
初代・佐藤孫平の妻、いよの実家である造り酒屋から醸造技術を学び、『亀屋本店』の屋号で醤油造りを始めたことが、歴史の始まり。その後、「亀」を丸で囲んだ標章(ロゴマーク)によって「丸亀さん」と親しまれてきたことから、屋号も『丸亀醤油』へと変更。現在は五代目の佐藤啓造さんが蔵を守っています。
創業以来、一軒一軒のお客様のもとへ商品を届ける商いを続けてきた『丸亀醤油』。便利な時代になった今なお、地域の人と顔を合わせて販売することを大切にしています。
そんな老舗が今回、鶴屋のお歳暮ギフトとして提案するのが「みそ玉詰合せ」です。
お椀にみそ玉を入れ、お湯を注ぐだけ。手軽に本格的なみそ汁を楽しめる、いわば手作りのインスタントみそ汁です。
「昔はみそ汁を作るのが当たり前でしたが、今は忙しくて、みそ汁を作らない人も増えました。ですから、もっと気軽にみそ汁を食べてもらえる機会を作りたくて」
そう話すのは、五代目の長女・汐里さん。
伝統の味を守るだけではなく、今の暮らしに合う形で届けたい。そんな思いから生まれたみそ玉には、老舗ならではの味と、現代の食卓への新しい発想が詰まっています。
一つひとつ手づくり。味の土台は、蔵自慢のみそ
今回の「みそ玉詰合せ」には、麦みそと赤みそをベースにした6種類の味が入っています。
「麦みそ×五色あられ」
「麦みそ×彩り野菜」
「麦みそ×とろろ昆布」
「麦みそ×えび」
「赤みそ×ごま」
「赤みそ×梅と玄米あられ」
6種類の組み合わせから、みその種類や具材による味わいの違いを楽しめる詰め合わせです。
みそに乾燥野菜や魚粉を混ぜ、一定の分量に分けて一つずつ丸めて、具材をトッピング。彩りも大切にしながら、それぞれのみそに合う具材を組み合わせています。
「みそは見た目が茶色っぽくなるので、ぱっと見てかわいらしく、食欲をそそるよう、色合いも意識しました」
そう話す汐里さん。
例えば赤みそと梅、玄米あられの組み合わせは、赤みその持つ酸味と梅の爽やかさに、玄米あられの香ばしさがアクセントを添えます。
そして、味の土台となるのが『丸亀醤油』自慢の麦みそと赤みそです。
麦みそは九州産大麦を使い、麦麹の割合を多めに仕込んだ、熊本らしい甘めの味わい。麦麹ならではのコクと香り、まろやかな口あたりが特徴です。
一方、『丸亀醤油』の赤みそは、麦みそとして仕込んだものをさらに熟成。同じ麦を使ったみそでも、熟成が進むにつれて味わいは変化します。発酵の過程で乳酸菌が増えることで酸味が生まれ、熟成による香りや独特の風味が加わるのです。
二つのみその個性を生かした6種類の味わい。そのおいしさの背景には、昔ながらの手間と時間を惜しまない、蔵のていねいなみそ造りがあります。
3日かけて育てる、麦麹の豊かな味わい
『丸亀醤油』の麦みそ造りは、まず大麦を洗って蒸し、麹菌をつけて麹室へ。温度を見ながら朝晩の手入れを重ね、麦麹ができるまで約3日かかります。同時に大豆を水に浸して蒸し、すりつぶしたものに麦麹、塩、水を加えて混ぜ合わせたものをタンクへ。重しをかけて、冬場なら約2カ月間、じっくりと熟成させます。
なかでも難しいのが麹造り。ほかの菌が入り込まないよう細心の注意を払い、仕込みの時期には納豆を食べることも控えるほど。こうして時間と手間をかけて育てたみそだからこそ、みそ玉にしても、その味わいはしっかりと生きています。
お湯を注ぐだけ。忙しい毎日に、老舗の味を
そんなこだわりのみそを使った「みそ玉」は、冷凍のまま保存できて、食べたいときにお椀へ入れてお湯を注ぐだけ。忙しい朝や、料理に手をかけられない日にも、手軽に一品を用意できます。
取材でいただいたのは、赤みそに梅と玄米あられを合わせた一杯。
お湯を注ぐと、みそ特有の豊かな香りがふわりと立ち上ります。口にすると、赤みそのコクに梅の爽やかな酸味が重なり、玄米あられの香ばしさとザクザクとした食感がアクセントに。食欲をそそる、印象的な味わいです。
続いていただいた麦みそと五色あられは、やわらかな甘さとコクのある、ほっとする味わい。彩り豊かなあられに加え、わかめや麩などの具材も入り、一杯の中にさまざまな食感があります。
「ピリ辛がお好きでしたら、ラー油や唐辛子を加えてもおいしいですよ」と汐里さん。温めた豆乳や牛乳で割れば塩味がやわらぎ、スープのような楽しみ方もできます。
子育てや仕事で忙しい世代にはもちろん、職場でのお弁当に添えて行けば、お湯を注ぐだけで本格的なみそ汁に。高齢の一人暮らしなら、手軽な滋養食として一品加えられます。
保存食としても重宝するため、世代を問わず、暮らしのさまざまな場面で活躍してくれそうです。
守るために、変わる。家族でつなぐ老舗の味
「普通に売っていても、あまり売れなくなってきているので。みそも醤油も。時代に合わせて考えていかないと」
汐里さんがそう話すように、伝統を守ることは、昔ながらの商品をそのまま作り続けることだけではありません。
『丸亀醤油』では2019年の創業150周年を機に、醸造蔵に併設して『発酵Café マルカメ』をオープン。みそや醤油を使ったメニューや、発酵食品を取り入れたランチ、デザートなどを提供しています。また、みそ玉やみそづくりの教室も開催し、若い世代にも発酵食品の魅力を伝えているといいます。
その歩みを支えているのが、家族の力。
今年2月に亡くなったお母さまから受け継いだレシピを、現在は長女の汐里さんと、三女の香波(こなみ)さんが引き継いでいます。かつては会社員や保育園の給食の仕事など、それぞれ別の道を歩んでいた姉妹。今では家業に加わり、父を支えています。さらに大学生の弟は、父の母校でもある東京農業大学の醸造科で専門技術を学び、将来は家業を継ぐ予定とのこと。
「後継がいなくて廃業を余儀なくされるところもあるなか、子どもたちが一致団結して家業を盛り上げようとしてくれて心強いです」と佐藤さん。
昔から食卓にあった、みその味。その味を絶やさないために、造り方は受け継ぎながらも、届け方は時代に合わせて変えていく。
「昔からの味を絶やしたくないですから」と口をそろえる、父と娘。
その言葉に、老舗を守る覚悟と、これからの食卓へつないでいく思いが重なります。
母から娘へ受け継がれたレシピと、明治から続く蔵の味。その味を、今の暮らしに寄り添う「みそ玉」という形で届ける『丸亀醤油』。お湯を注ぐだけで楽しめる手軽さの中には、家族が大切に守ってきた、豊かな味わいがあります。
忙しい毎日に、ほっとする一杯を。
遠く離れた家族や、日頃お世話になっている方へ、熊本に根づく老舗の味を贈る。
「みそ玉詰合せ」は、大切な人の健やかな日々を願う冬の贈り物にふさわしい一品です。