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「西岡さんは、ミツバチと話ができると聞きましたが」と問うと、有限会社西岡養蜂園の代表取締役西岡千年さんは破顔(はがん)一笑。「どうでしょう?」と、愛嬌ある表情で答えが返ってきました。
日々、ミツバチに寄り添って暮らしているという西岡さんは、養蜂に携わって30年。父親の代までのイ草農家から、将来を見据えて養蜂業への転換を決意し、18歳で福岡県朝倉の養蜂家に弟子入り。2年間修行しました。
「師と仰ぐ親方に付いて全国を回り、養蜂を学びました。今も、親方の教えを大切にしています」と西岡さん。生まれ故郷の八代に戻り、祖父から受け継いだ10箱の巣箱から養蜂を始めました。しばらくの間は失敗が続き、試行錯誤の日々だったそうです。イ草農家をやめて養蜂業に専念するようになって20年。今では、農作物の交配用としてミツバチやマルハナバチを育てて全国の農家に出荷販売する一方、自社のミツバチから採取したはちみつの販売も手掛けるようになりました。
西岡養蜂園の最大の特徴は、西岡さんの家族やスタッフでミツバチを育てていることにあります。「うちは、はち屋≠ネんですよ」と西岡さんは強調します。昨今のニュースでは、ミツバチが年々減少していると耳にします。だからこそ西岡さんは、自社でミツバチを育て続けていることに誇りを持っているのです。八代市を拠点に、毎年2月は鹿児島の奄美大島へ、夏は青森、北海道へ。西岡さんたちは毎年、ミツバチを育てながら移動しています。その理由は、家族である<~ツバチに、少しでも過ごしやすい環境を提供してあげることで、ミツバチに健康を維持してもらいたいから。
ミツバチは人間とほぼ同じ体温で、外気温に敏感な生物。寒い時期は動きが鈍くなります。そのため、2月には気温の高い奄美大島に移動させます。「採蜜をするためではありません。プロ野球に例えたら、春季キャンプですよ」とのこと。暖かな場所で過ごすことで、春の到来とともにすぐミツバチが活発に動けるようウォーミングアップさせるのです。
3月下旬からは熊本で過ごし、熊本が梅雨を迎える時期から8月は、女王蜂が卵を産みやすく、増殖に適した気候となる北海道へ。その間は、青森や北海道に咲くリンゴや菩提樹などの花の蜜を採蜜します。「ミツバチと一緒に、自然と向き合いながら多種類の花の蜜を採取し、一種類の花の蜜から作られる単花蜜を届けたい」という西岡さんの思いが詰まっているはちみつです。
しかし、移動先で採蜜できるという保証はありません。「私たちはミツバチを育てているだけ。気温や天候、花の開花状況などが揃った上で、ミツバチが元気でいてくれなければ、蜜を集めることはできません」と西岡さん。そして、私たちはミツバチと共に生き、共生共存していると言葉を繋げます。
採蜜は、巣箱に入れている巣板を振るい、刷毛でミツバチをよけた後、蜜蓋を包丁で落とします。遠心分離機にかけて絞り、検査で自社基準が満たされたものだけを出荷しています。また、単花蜜にこだわるだけでなく、例えばれんげ蜜であれば、れんげの開花期間中、最も旬の時期の花から採った蜜のみを集めて加工しています。
巣から絞った蜜は、ろ過して不純物を取り除くのみ。このことで、ミツバチが集めた蜜に本来含まれている良質な成分をそのまま摂取することができます。糖度は高いものの、カロリーは白砂糖のおよそ3分の2程度。さらにすぐにエネルギーに変換されるブドウ糖と果糖で構成されています。そのため、整腸作用が期待できるといわれ、1カ月以上続けて摂取することで体調や肌の変化を感じる人もいらっしゃるそうです。例えるなら食べる化粧水≠フようなものかもしれません。また、喉をチクチクと刺激することのない、まろやかな甘味を味わうことができるのです。
今回紹介するはちみつは、3年前に商品化した12種類のシリーズ。各はちみつには番号が振られており、それぞれに色も味も全く異なり、個性的。味を比べて好みのはちみつを探す楽しめます。No.1の不知火蜜は熊本県芦北町に咲く不知火に育つ花から採蜜したもの。食べた後、柑橘の爽やかな風味が口の中に残ります。
No.2の菜の花蜜は、拠点の熊本県八代市に最初に咲く菜の花から集めたもの。昔ながらの素朴ながら濃厚な味わいが魅力です。また、No.3の晩白柚は、爽やかで酸味があり、香り豊か。夏におすすめのさっぱりとした味です。No.7の栗は熊本県人吉市の栗の花から採蜜。独特の香りと渋みがあり、チーズや赤ワインとの相性は抜群です。ほか、温州みかんやれんげ、百花蜜など、熊本県内に咲く花から採蜜したものが全7種類。アカシアや蕎麦、りんご、クローバー、菩提樹は北海道や青森に咲く花から採蜜されたものです。
西岡さんは、蜜源を増やす取り組みも行っています。「農家に、栽培していない時期の田んぼでれんげを植えてもらうよう、協力していただいています。農家にとっては、土壌作りにも役立つ取り組みだと思っています。また、山に植林も続けています」と西岡さん。
「ミツバチは人間が食べるものの80%に関わっていると言われているんですよ。そのためミツバチがいなくなると、人間は3年ほどで生きていけなくなるそうです。例えば、農作物が実をつけるための受粉、牛や豚が食べる飼料用作物の受粉など、自然界ではすべてハチが行っている仕事なんです」と西岡さんは話します。日本の農業の発展のため、食文化を支えるためにも、ミツバチを増やすことは大切なことだと言うのです。そのため、養蜂家の育成にも力を入れています。「ミツバチは、知れば知るほど奥が深い。どんどんハチの世界に引き込まれていって、今ではミツバチを育てることは自分の使命だと感じています」と、きっぱりした口調です。西岡養蜂園のスタッフは、皆、素手で採蜜やミツバチの手入れを行います。「ミツバチは私たちにとって家族です。家族に触れる時、手袋をする人はいないでしょう?」。
西岡さんは、18歳で弟子入りした初日に、体中を100カ所ほどミツバチに刺された経験があります。「その時、思ったわけです。先輩たちは一カ所も刺されていないのに、なんで俺だけ?って(笑)。ミツバチが人を刺すのには、理由があります。ミツバチの本能を知り、乗り越えていかなければ職人にはなれません」とのこと。ミツバチの本能を理解し、動きを見て、興奮させないように、できるだけミツバチを殺さないように自らが動くこと。今、西岡さんは、羽音でミツバチの機嫌が分かると言います。「優しく接すると、ミツバチたちも優しくなる。そして美味しい蜜を集めてくれるようになるんですよ」と教えてくれました。
1989年創業の養蜂園。10箱の巣箱から始め、全国の農家に自社で育てた交配用ミツバチの販売を行い、採蜜したはちみつの加工および販売に携わってきました。2018年3月には、国道3号線沿いにはちみつ専門店をオープン。店内には、はちみつはもちろん、スイーツやドレッシング、ジャムなどが並びます。カフェでは、はちみつを使ったドリンクや料理が提供されています。
熊本・北海道・青森の各地に蜂を運び、採取した蜜を熊本(八代)でビン詰めした12の異なる色と味を楽しめるはちみつのシリーズです。ミツバチのお腹の中に、はちみつがたっぷり詰まっている様子をイメージしたパッケージ。採蜜する花によって異なるはちみつの色も楽しめます。1日に小さじのスプーン1杯(約5g)ずつで約1カ月分を目安にした内容量です。
■1本 1,944円(税込) ●165g入
1.不知火蜜(熊本県芦北町)/2.菜の花蜜(熊本県八代市)/3.晩白柚蜜(熊本県八代市)/4.みかん蜜(熊本県河内町)/5.森の蜜(阿蘇外輪山)/6.アカシア蜜(北海道)/7.栗蜜(熊本県人吉市)/8.れんげ蜜(熊本県八代市)/9.蕎麦蜜(北海道)/10.りんご蜜(青森県)/11.クローバー蜜(北海道)/12.菩提樹蜜(北海道)
商品の購入は100%熊本百貨店で