Vol.1
アントルメ菓樹
熊本の恵みを、ひと箱に。
「分かち合う喜び」をカタチにした、鶴屋限定の甘い夏便り
熊本地震から10年の節目を迎えた2026年。あらためて「熊本の素材」に向き合い、その魅力をひと箱に託した鶴屋お中元ギフトが『アントルメ菓樹』から誕生しました。大々的に語ることはなくとも、この10年の歩みと土地の恵みへの深い敬意が静かに息づく品々―――。お店を訪ねて、作り手の思いと味わいの背景をうかがいました。
三代にわたり受け継がれる、「町のお菓子屋さん」の哲学
熊本市電の終着駅、健軍町からほど近い場所にある『アントルメ菓樹』。まるで森の中に迷い込んだかのようなテラスをくぐり抜けて扉を開くと、香ばしく甘い匂いが訪れる人を優しく迎え入れてくれます。
お話を伺ったのは、代表執行役員の深田恭平さん。勤続21年、現場の最前線に立ってお店の味を支え続けてきた、生粋の職人です。
「実は、表に出るのがあまり得意ではなくて……」
そう照れくさそうに笑う深田さんですが、その眼差しには、積み上げてきた技術への静かな自負が宿っています。
『菓樹』の歴史は、1991年に神戸などでフランス菓子の修行を積んだ柴田博信さんが、父親から受け継いだ和洋菓子店を洋菓子専門店にしたことから始まりました。そこにあるのは、フランス菓子の技法をベースにしながらも、熊本の風土に溶け込む「調和」の美学。現会長の博信さんは「一店舗主義」を貫き、ブランドの磨き上げに心血を注いだ人物。3年前に息子の悠貴さんへとバトンが渡されたことで、老舗は新たなステージへと踏み出しました。
「先代は、この場所でブランドをピカピカに磨き上げることに注力されていました。それに対して現社長である三代目は、より広く、より多くの方に『おうちの菓子』として楽しんでいただきたいとの思いがある。熊本駅や阿蘇くまもと空港へ店舗を広げたのも、熊本の玄関口で、私たちの思いが詰まったお菓子を直接手渡したいとの願いからです」(深田さん)。一店舗の「点」から、地域を繋ぐ「線」へ。深田さんは、その大きな転換期を現場で支え続けています。
熊本の恵みと、究極の口どけ。今夏、鶴屋のためだけに生まれた、2つのお中元ギフト
『菓樹』のお菓子作りを語るうえで欠かせないのが、熊本という土地への深い敬意。今回開発していただいた2026年の鶴屋限定お中元ギフトからも、素材に対する真摯な姿勢が伝わってきます。
誕生したのは、焼き菓子とジュレの詰め合わせ、そしてジェラートのセット。なかでも印象的なのが、「熊本素材」を主役に据えた焼き菓子の数々です。
まず、球磨郡山江村の栗加工品で名高い『やまえ堂』の栗を刻み込んだ「肥後栗」は、マドレーヌとパウンドケーキの良いとこ取りといえる、しっとりとしながらもほどよい弾力。噛むたびに現れる栗の粒感が楽しく、素朴で奥行きのある甘みが広がります。
続いては、天草産レモンを果汁も皮も余すところなく使った「レモンケーキ」。やわらかなスポンジを、爽やかな酸味のレモン糖衣で包み込んだ一品です。収穫期に絞ってストックしておくというていねいな仕込みが、この香り高さを支えています。
創業以来の看板商品「フロランタン」は、熊本の小麦とはちみつを用い、サクサク、カリカリと軽快な食感。ナッツの香ばしさとバターのコクが、ティータイムを格別なものにしてくれます。
熊本の名水として知られる「白川水源」の湧水を使ったジュレは、涼をもたらしてくれる冷たいデザート。試食した「有明レモン」はスプーンが要らないほどやわらかく、口に入れた瞬間、つるんとした食感とともに果実の芳醇な甘酸っぱさが一気に弾けました。天然由来のゲル化剤との緻密な配合によって生まれた、「飲むジュレ」と呼びたくなる独特の食感です。
ひんやりとした余韻を届ける「肥後の恵みジェラート」
次にご紹介するのは、ジェラートを詰め合わせた「肥後の恵みジェラート」。
宇城特産のかんきつを使ったフレーバー「不知火フロマージュ」は、クリームチーズのコクと酸味に、不知火の爽やかな甘酸っぱさが重なり、濃厚でありながら軽やかな後味。空気をほどよく含ませた、なめらかな口溶けが印象的です。
また、「和栗」は、菊池産の栗をペーストにして練り込み、熊本県産ミルクと合わせたやさしい味わい。栗の存在感をしっかり感じながら、どの世代にも親しみやすい仕上がりとなっています。
そして、今回のギフトのために考案されたのが「晩白柚」のソルベ。手むきした皮をほんの少し削り入れ、果汁と果肉の粒を忍ばせることで、独特の清々しい香りと食感が見事に再現されています。まるで晩白柚そのものを口にしているような、凝縮感のある味わいに。
「『菓樹』の店名に込められた“喜びを分かち合えるお菓子を”と考えた結果、自然と盛りだくさんになってしまいました」と深田さんは笑います。
お菓子がつなぐ、心と心
深田さんは2016年の熊本地震でご実家が全壊し、避難所生活を経験されました。この店もまた被災しながらも機械や食材を使って炊き出しを行い、地域の避難所として開かれていたといいます。
「お菓子はあくまでも嗜好品。それでも、あのとき“お菓子があってほっとした”という声をたくさん聞いて、存在の意義を実感しました」と、振り返る深田さん。
味を守るためにスタッフ同士で何度も試食を重ねる日々と、まだ見ぬ熊本素材を求める探究心。そのすべてが、今回のギフトセットにも息づいています。
大きな樹の下で人が集うように。『アントルメ菓樹』の2026年お中元ギフトは、その間にそっと寄り添う菓子があることの豊かさを、あらためて感じさせてくれる品々です。笑顔を紡ぐ至福のスイーツを通じて、心を通わせるひとときを。